この風景の写真は、先月末に僕が訪れた“観光地”で、ベストフォトスポットと言われている場所から撮ったものなんです。ここがどこだかお分かりになる方はいらっしゃるでしょうか^^
この手前の建物は、足利二代将軍義詮が建立した「天寧寺」というお寺にある「三重塔」です。そして、遠方に見える橋は「尾道大橋」という名前の橋です。
橋の名前で分かってしまいますね^^;
はい、ここは広島県の尾道です^^
今日の記事では、5年ぶりに訪れた尾道での2日間の “思い出” を形に残したいと思います。
🍀僕と尾道の関係。
尾道は亡き父の育った町です。ここには、僕が3歳の時に他界した祖母が建てたお墓があります。僕にとって尾道は、父が眠るそのお墓があるだけで、面識のある人は全く誰もいない “田舎” です。
本当は来年が父の7回忌なのですが、来年、また何らかの規制がかかって、来たくても来れなくなることもあるかもしれないと思い、行ける時に行っておこう、と思い立っての今回の尾道でした。
🍀尾道の町。
本来、自分の田舎であるにも関わらず、僕はこの町に人生を通じて7回ぐらいしか来たことがありません。それゆえ、尾道に関する知識は、一般観光客レベルしかないのですが、そんな僕なりにこの町の素敵な空気をお伝えできれば、と思いながら写真をアップしていきます^^
まず尾道の印象ですが、「瀬戸内海に面したお寺と坂道の町」と言う感じでしょうか。
この記事冒頭に貼った写真の三重塔がある天寧寺には、ここから上がっていきます。
境内から少し遠方の三重塔を見上げて。
このお寺には五百羅漢の御堂があるのですが、五百羅漢像を写真撮影することは良くない気がしたので手を合わせるだけにし、その代わりに、御堂の中の壁に貼ってあった、『あいだみつをさんの言葉』を撮らせてもらいました。
「みんなみている ちゃんとみている」。
そんな風に見えないものを信じて生きられれば生きられるほど、心の平穏が増して生きやすくなるのかもしれないな、って、これを読んだ時、思いました。
さて次は、この尾道のお寺の中で観光的に?最も有名な千光寺がある山頂に上がるロープウェイからの風景です^^
山頂から尾道水道を臨みます。
山頂から山麓まで降りる道に、「猫の細道」と名付けられた小道がありました。
「道のいたるところに猫がいるんだろうか♪」って少しワクワクしながら、その細道を下りました。
「あ。猫、いた♪」
この細道のシンボルが『福石猫』と名付けられた、尾道出身のデザイナーさんが制作した“石の置物”です。道の途中、何度か目にしました^^
途中のカフェでちょっとブレイク♪
下まで降りてくる途中で、この日はほとんど猫に出会えず、ちょっと残念でした。
途中で、何度か下から登ってきた観光客の人とすれ違いましたが、みんな息が切れていて、「この細道は絶対下るに限る」って胸に刻みました^^;
🍀放浪記。
この像は、林芙美子さんという昭和前期の作家です。当時の尾道の女学校卒なのだそうです。ベストセラーになったデビュー作が『放浪記』。写真の中の記念碑の文章、読めますでしょうか。
『海が見えた 海が見える 五年ぶりに見る 尾道の海はなつかしい』
「五年ぶり・・・。僕と同じだな。」
銅像を前でこの文章を読んだら、芙美子さんの当時の気持ちがなんとなく感じられた気がしました^^
『放浪記』。読んだことはないのに、なんかよく耳にしたことがあるタイトルだなぁ、ってずっと思っていました。
今回、こうして記事にするにあたり、ちょっと調べてみようと思い、ネット検索してみてみると。
「あーーーー!、そうだったんだ・・・」
『放浪記』は、あの森光子さんがライフワークとして2,017回も演じ続けた舞台のタイトルでした。
あれはもう15年ぐらい前のことでしょうか、80代半ばを過ぎた森光子さんが、そのお芝居の中で「でんぐり返し」をする名物演技を、もう高齢だから危険という理由で禁止された、という内容のニュース記事を読んで、言葉にできない思いが胸に湧いてきたことを思い出しました。
晩年、森光子さんは、入院中の枕元にいつもこの『放浪記』の台本を置いていたそうです。
森光子さんが演じる、その舞台を見てみたいなぁ・・・
そう思いながら、ネット検索してみると、なんとAmazonで森さんが演じる舞台のDVDボックスが販売されていました!
でもちょっとお値段高め・・。どうしよう、と考えながら中古品を検索すると、非常に良いコンディションの半額品を発見。「これはもうご縁!」、もう流れに任せ、購入しました!
森さんの戒名は「恵光院放誉花雪逗留大姉(けいこういんほうよかせつとうりゅうだいし)」だそうです。とても長い戒名ですね。意味は、「放った恵みの光は多くの人の心に留まる」だそうです。
森さんの役者人生そのものとも言える『放浪記』の舞台を鑑賞する中で、まず作者・林芙美子さんの思いを感じ、それをきっかけとして自分の中での尾道に対する思いもさらに深まったりするといいなぁって思います^^
🍀祈り。
今回、尾道に一泊2日で訪れたメインの目的は、記事の冒頭で書いた通り「お墓参り」でした。
お寺の御住職は外勤されていてお話をすることが出来なかったのが残念でしたが、五年ぶりのお墓掃除、そしてお供えをして。
いつも水を入れている器に、「親父、好きだったし、ビール注いじゃおう!」とひらめいて♫
お墓の前に1時間半ほどいる間に、何度か入れ替えた350ml缶のビールの中身は空になりました^^
ふと見ると、掃除を終えた墓石に一匹の小さな蜘蛛が。
この蜘蛛、下から上がってきたのではなく、なぜか墓石の上から下にスルスルスルって降りてきたんですよ。
「もしかしたら親父?それともこのお墓を建てたおばあちゃんかな?」
そんなことを思いました^^
お墓の前で手を合わせて御先祖様に伝えた祈りの「結び」はこれでした。
皆さんに対する一番の供養は、僕が幸せな家庭を築き、そして娘たちに「家族っていいものだな」って思いを持たせて巣立ちさせてやることだと思っています。幸せな血縁として未来へ繋いでいくことが、今生きている僕の役目。いろいろなことがあって気疲れしてしまうこともありますけど、それを信じてがんばって生きていくので、これからも見守ってください。お願いします。
合掌を解いて目を開くと、思いがけず何か込み上げてくるものがあって涙がこぼれそうになりました。こういうことは初めての経験でした。
ちょっと疲れていたのかもしれませんね^^
🍀この町の優しさの象徴。
JR尾道駅の駅前です。平日ということもあるのでしょうが、人はまばらです。
駅から海沿いに3分ほど歩いたところに、こんな小さな食事処がありました。
こちらの食堂の名前は、『しみず食堂』。
ネットで調べたところ、戦後からもう70年以上も続いているお店とのこと。
「親父も中高校生の頃、来たことあるのかもしれないな・・」
そんなことを思ったら、ここで昼食をとりたくなり、お店ののれんをくぐりました^^
これは店内の突き当たりの窓際のテーブル席。
店内全体もこの写真の雰囲気を全体に拡げたような感じです。壁にはメニューはもちろんのこと、来店したお客さんが書いた一言コメントメモがたくさん貼ってあり、その中には見覚えのある芸能人の写真とコメントもありました^^
年配のご夫婦お二人で営まれているのですが、ここのおかあさんが本当に気さくな方で、料理をされているご主人もこのおかあさんの話にタイミングよく相槌と合いの手を入れられて、「仲良くずっとやってこられたんだなぁ」って、穏やかな温かい気持ちにさせてもらいました^^
このお店で僕が注文したのはこちらです。
まず奥の煮付けの魚。
名前を聞くと、おかあさんとご主人、声を揃えて、『タモリ!』と。
尾道のスーパーでも売っている瀬戸内海でとれる魚だそうですが、後でネットで調べてみると、正式名称は『瀬戸鯛』でした^^
柔らかくて美味しい白身魚でしたが、何より煮付けの汁が、薄味の優しいお味なのに確かな美味しさが滲み出てくるような感じの絶品でした♫
僕が9割方食べ終えた魚の皿を、おかあさんが一旦引き揚げて、しばらくしてまた持ってきてくれたのがこの『あら汁』。
「こうすると美味しくきれいに全部食べれるからね!」と、おかあさん。
そして『尾道ラーメン』。
「うわ、なんか優しい味で美味しい♫」
こちらのスープも、これまでに食べた尾道ラーメンのスープとは何か違う絶妙な隠し味があるように感じられて、「なんの味なんだろう?」って思いながら食べているうちにスープは全部無くなっていました(笑) おかあさん曰く、「お店によって味は違うからねー♪」
このお店でのひとときは、平穏でとっても優しい気持ちにさせてくれました。次回、尾道を訪れた時も必ずまた行こう、って思います^^
東京に帰ってきてからネットで調べてみたら、こんなニュース記事がみつかり、なんだか嬉しくなりました♫
🍀尾道の海。
お墓参りがメインの旅だったので、時間の制約から、同一エリアでの海しか見ることができなかったのですが、それでもやっぱり海の写真を並べたいです^^
日の入りの2ショットです♪
次の写真は、しまなみ海道の島々の中で一番近い「向島」との往復フェリー乗り場です。観光用と思いきや、車や自転車、そして徒歩の人、と、とてもたくさんの人が日常の足として利用している風景が新鮮でした。
“夜” の尾道水道。実はまだ18時頃の光景なのですが、もうすっかり夜です^^; しかし、日常の足であるフェリーは、この後まだ数時間は往復の運行を続けるようです。
🍀尾道を発つその前に。
帰りはこの電車でまず福山に戻ることになります。
その数時間前、どんより曇り空の下で、この尾道の海を背にして。
本当に思いがけず僕の口から無意識にフッとこぼれた小さな声でのつぶやき。
「もっとここにいたいな。」
ここには、東京目線でのワクワクは「なんにもない」、それに、これはコロナ禍自粛の流れもあるでしょうが19時にはほとんどのお店が閉まってしまって、夜はホテルでテレビを観て過ごすしかやることがなかったりするけれど・・・でも、プライスレスな「優しい海」「優しい人たち」「優しい味」で創られた『優しい気』がある。
思考を使わない、素の僕が最も望んでいる幸せって、「平穏で優しい時間が流れる生活」なのかもしれないな、って思いました。
諸行無常、変化が常のこの世界でそれをいかに成しえるか、それが僕にとってのライフテーマなのでしょう。
その答えは、きっと自分の外側でなく内側にあるんですよね。
ブログをやっていたおかげで、今回、こんな風に尾道の記事が書ける機会が持てて幸せです^^